【浴場施設関係者必見!】レジオネラ菌除去を目的とした配管洗浄をしたいならこの方法!
こんにちは!茂木和哉(@motegikazuya)です。
私は22歳頃か30歳を過ぎる頃まで、温泉施設や老人施設などのお風呂の配管を洗う仕事をしていました。
配管を洗う目的は、配管に住み着いた(住み着いているかもしれない)レジオネラ菌という怖い菌を退治するためなんです。
と言うことで今回は、浴場施設でのレジオネラ菌除去を目的とした配管洗浄についてのお話しをしたいと思います!
「かけ流し」と「循環式」
公衆浴場は、浴槽のお湯を循環しながら捨てずに使う「循環式」と、新しいお湯をずっと浴槽に入れ続ける「かけ流し」の2種類に分けられます。
銭湯や健康ランドなど水道水を使った浴場施設のほとんどが「循環式」になりますが、温泉宿など温泉水の場合は、「かけ流し」と「循環式」のどちらもあります。
基本、湧き出る温泉の量が少ない場合は「循環式」、多い場合は「かけ流し」となケースが多いですね。
それで、今回お話しする配管洗浄が必要なのが「循環式」の方だけなんです。
循環式をもう少し詳しく説明すると、汚れた浴槽水を循環ポンプで濾過装置を通してキレイにし、熱交換器で温めなおし、さらに塩素で消毒して浴槽に戻すという感じです。
なので配管洗浄せずに使い続けていると、循環するための配管や濾過装置内部、ポンプ内部、熱交換器内部など、浴槽水が通るところが徐々に汚れていきます。
さらに、汚れを餌にして「レジオネラ菌」が繁殖します。
レジオネラ菌の住みかは「バイオフィルム」
なので配管洗浄をしなければしないほど、浴槽水を入れ替えず長く使えば使うほど、レジオネラ菌が増殖し「レジオネラ症」に感染するリスクが高くなるお風呂となるわけです。
レジオネラ症(legionellosis)は、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)を代表とするレジオネラ属菌による細菌感染症です。主な病型として、重症の肺炎を引き起こす「レジオネラ肺炎(在郷軍人病)」と、一過性で自然に改善する「ポンティアック熱」が知られています。
引用:レジオネラ症とはなんですか?(厚生労働省)
配管の内側にレジオネラ菌を含めて雑菌がたっぷりついている状態は、ヌルヌルした汚れが厚くべったり付着している状態です。
そのヌルヌルした汚れを「バイオフィルム」と言いますが、配管洗浄の最も大きな目的はそのバイオフィルムをキレイに洗い落とすことになります。
配管洗浄に使われる洗浄剤&茂木和哉のオススメ洗浄剤
一般的な配管洗浄は、浴槽に洗浄剤を入れてろ過装置を回して循環洗浄していきます。
使用される薬剤には、酸化剤が多く使われます。
例えば、過酸化水素水や過炭酸ナトリウムなどの酸素系酸化剤や、二酸化塩素や次亜塩素酸ナトリウム、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウムなどの塩素系酸化剤です。
当時、私が配管洗浄に使っていたのが酸素系酸化剤です。
中でも「過炭酸ナトリウム」をよく使ってました。
同業者の方は、同じ酸素系酸化剤でも「過酸化水素水」を使うことが多いのですが、過酸化水素水は「劇物」なんですよね。
使用する洗浄剤が劇物の過酸化水素水となると、業者でないとできない仕事って感じがしてしまいますが、過炭酸ナトリウムなら何も業者に頼まなくても、施設の方達でもできそうな感じると思うんです。
なので、過炭酸ナトリウムを使って私が洗浄する場合と、過炭酸ナトリウムを施設で購入して自分達が洗浄する場合の2つのパターンを提案して、施設側に選んでいただく形をとつてたんですよね。
塩素系酸化剤をバイフォルム除去に使わない理由
また、私が塩素系酸化剤を使って配管洗浄をすることもありませんでした。
3つの理由があります。
まず1つ目は、バイオフィルム除去の効果が低い点です。
塩素系酸化剤の殺菌力はとても強いのですが、レジオネラ菌の住み家となる配管内にバイオフィルムの除去となると、酸素系酸化剤より効果が弱いと言われました。
塩素濃度を高くすればいいかもしれませんが、そうもできないんですよね。
それが2つの理由に繋がるのですが、それがサビやすい点です。
先ほど塩素系酸化剤は、殺菌力が強いとお伝えしましたが、それは酸化力が強いからなんです。
と言うことは、強腐食性がとても高いってことでもあるんですよね。
なので循環経路内の金属部材をサビさせるリスクが、酸素系酸化剤よりかなり高いんです。
3つ目は、アルカリ温泉では除菌力が激減するからです。
塩素系酸化剤は、アルカリ環境下で残留塩素の除菌効果が激減します。
特に次亜塩素酸ナトリウムは、製品自体がアルカリ性ですので浴槽に入れることで、さらにアルカリ側に傾けてしまい、より効きが悪くなります。
日本の温泉の、ほどんどがアルカリ性ですからね。
その3つの理由から、レジオネラ菌対策を目的とした配管洗浄には、塩素系酸化剤ではなく酸素系酸化剤を使ってました。
茂木流の循環配管洗浄法!
お待たせしました。
では、私が当時やっていた配管洗浄方法をご紹介します。
まず使用する酸素系酸化剤は、「過炭酸ナトリウム」です。
その過炭酸ナトリウムを、循環ろ過装置を運転した状態で浴槽水1トンに対し0.5から2
%投入します。
そして、90分から120分程ろ過運転し配管内部を洗浄します。
次に、過炭酸ナトリウムを投入したことでアルカリ性に傾いたpHを、酸性芒硝を投入して中和させます。
酸性芒硝の投入量は、過炭酸ナトリウムと同量投入です。
そして10分間運転します。
中和が終わったら今度は酸素を飛ばす目的で、亜硫酸ソーダを投入します。
亜塩素酸ソーダの投入量は、過炭酸ナトリウムの投入量の10%です。
そして40分ほど運転します。
終わったら運転を止めて浴槽水を排水します。
排水したら浴槽内を掃除し、循環運転ができるまで水をためてすすぎ目的で30分運転します。
もう1回すすぎの作業を繰り返し終わりです。
過炭酸ナトリウムを使った配管洗浄の注意点
以上ですが、注意点があります。
過炭酸ナトリムは、浴槽水に溶けると酸素の気泡をだします。
この気泡が、バイオフィルムの洗浄には一役立っているのですが、循環ポンプに気泡がたまりすぎるとポンプの水が落ちた状態になり循環できなくなることがあります。
特に、
・過炭酸ナトリウムの投入量が多い場合
・ポンプから浴槽までの距離が長い場合
・ポンプの位置が浴槽よりちょっとでも高いところにある場合
は、よく起こります。
そんな場合は作業がとても困難なる原因となりますので、事前にポンプから浴槽までの距離とポンプが浴槽より高い位置にあるのかを確認しておくのがいいでしょうね。
もしその様な場合ですが、過炭酸ナトリウムの投入量を少なくし循環時間を長くするか、専門業者にやってもらう事をオススメします。
配管洗浄の頻度は、最低でも年に1回がベストです。
これは確か公衆浴場法で決まっていたと思います。
週に1回は簡易的な配管洗浄を!
酸素系酸化剤でしっかり配管洗浄した後は、簡単でもいいので浴槽水を入れ替えるタイミングに合わせて配管洗浄をすれば完璧です。
この時は、塩素系酸化剤の方がオススメです。
理由は、自分達でも簡単にできることと、酸素系酸化剤で洗浄した後なので配管はキレイになっているからです。
なので塩素濃度をそんなに高くして使わなくても大丈夫なので、必要がなく金属素材の腐食のリスクが減るからです。
でもできれば使う塩素剤は、アルカリ性の次亜塩素酸ナトリウムより中性のジクロロイソシアヌル酸塩の方がいいと思いますね。
ジクロロイソシアヌル酸塩の塩素剤といえば、「黒木真白」です。
そうです、週1回の簡易的な配管洗浄にも「黒木真白」はオススメなんです!
「黒木真白」を使った循環配管の洗浄方法
では「黒木真白」を使った配管洗浄方法を詳しく説明します。
まずは、浴槽水を循環できる最低量まで排水し、残った水量を計算します。
計算方法は、残った浴槽水の縦×横×水深+配管水量+ろ過装置水量の合計ですが、ざっくりで大丈夫です。
次に、黒木真白の投入量を計算します。
残留塩素濃度は20mg/Lに設定して配管洗浄するのですが、投入量の目安は、浴槽水3トンに対し黒木真白100gです。
求めた投入量の半分をまずは投入し、浴槽水の塩素濃度を測定しながら黒木真白を追加で少しずつ投入しならが残留塩素濃度を20ml/Lに設定します。
普段使っている残留塩素測定器でも浴槽水を10倍希釈すると20mg/Lを測定できます。
2mg/Lになれば、浴槽水の元の濃度は20mg/Lと言うことになりますからね。
塩素濃度の設定ができたら、2時間循環運転します。
終わったらチオ硫酸ナトリウムなどの脱塩素剤を使って塩素分を飛ばします。
脱塩素剤は、残留塩素濃度測定器でこまめに測定しながら少しずつ入れてください。
後は排水し終わりです。
最後に
いかがでしたでしょうか?
まとめますと年に1回のちゃんとした配管洗浄を自分達で行いたいなら、オススメな洗浄剤は「過炭酸ナトリウム」、浴槽水の入れ替えのタイミングで行う簡易洗浄にオススメな洗浄剤は「黒木真白」と言うことになります。
ぜひ参考にしていただけたら嬉しいです!