「塩素系」につてい深く掘り下げてみる!

茂木 和哉

皆さん、「塩素系」漂白剤というと、どんなものをイメージしますか?

・液体
・ツンとくる独特の臭い
・薄い黄色
・ヌルヌルする
・容器が緑色
などでしょうか?

実はこの特徴は、塩素系漂白剤の特長というよりも「次亜塩素酸ナトリウム」という塩素剤の特長なのです。

家庭用、業務用を含め、塩素系漂白剤のほとんどに、次亜塩素酸ナトリウムが使われているので、塩素系漂白剤のイメージが、先ほどあげた点をイメージしてしますのです。

ですが、なにも塩素系は次亜塩素酸ナトリウムだけではありません。

まだまだあります。

そこで今回は、塩素剤の種類と特長についてお話したいと思います。

まずは種類ですが、
1.次亜塩素酸ナトリウム
2.次亜塩素酸カルシウム
3.トリクロロイソシアヌル酸
4.ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム
の4つがあります。

では詳しく説明していきます。

 

1.次亜塩素酸ナトリウム

先にお伝えした通り、ほとんどの塩素系漂白剤の主成分として使われているのが、この次亜塩素酸ナトリウムです。

特徴としては、
・液体である。
・塩素濃度が高くない。
・塩素が飛びやすい。
などがあります。

実は、液体の塩素剤は、この次亜塩素酸ナトリウムだけで、他の3つは固形です。

他の3つは、水で溶かして液体にしてから使うのですが、固形のものは、溶かすと塩素濃度が徐々に落ちていきます。

一方、次亜塩素酸ナトリウムは、最初から液体の状態です。

この、塩素系では唯一無二の「液体」という特徴が、製品化するのには非常に都合が良いわけです。

しかし、最初から液体の次亜塩素酸ナトリウムでも、固形タイプの溶かした液ほどではないのですが、塩素濃度は徐々に飛んでいきます。

さらに、原料用の次亜塩素酸ナトリウムは、濃度が高いもので12%です。

後で他の塩素剤の濃度を説明しますが、この12%という数値は、他の塩素剤と比べると非常に低い数値なのです。

メーカーでは、濃度12%の次亜塩素酸ナトリウムに界面活性剤や添加物などを加えて漂白剤やカビ取り剤と作ります。

なので必ず塩素濃度は、12%より必ず低くなります。

一般的な製品の濃度は、キッチン用漂白剤、衣類用漂白剤で5パーセント前後、カビ取り剤で0.5%ぐらいといったところです。

製品にすることで、さらに低くなった塩素濃度を、少しでも長く保たせる工夫として、製品の容器は光が入りにくいよう色をつけています。

漂白剤の容器が、緑色だったり、カビ取り剤のスプレーボトルが乳白色だったりするのは、そのためです。

用途としては、漂白剤以外にも、水道水の消毒や公衆浴場のお風呂の水の消毒として使われています。

 

2.次亜塩素酸カルシウム

言葉としては次亜塩素酸ナトリウムにとっても似てますが、大きく違う点が3つあります。

それが、
・次亜塩素酸ナトリウムが液体なのに対して、次亜塩素酸カルシウムは固形。
・次亜塩素酸ナトリウムがアルカリ性なのに対して、次亜塩素酸カルシウムは中性。
・次亜塩素酸ナトリウムは塩素濃度が高いもので12%なの対して、次亜塩素酸カルシウムは70%。
という点です。

ちなみに、この次亜塩素酸カルシウムは、「さらし粉」とも呼ばれたりします。

塩素濃度は高いのですが、水に溶かしてからの塩素濃度の持ちがよくありません。

溶かしたとたん、一気に塩素濃度上がり、その後急降下します。

そこが大きなデメリットです。

もう1つデメリットがあります。

それは完全に解けないことです。

次亜塩素酸カルシウムは、水酸化カルシウムに塩素を加えてつくっているのですが、そのカルシウム分が解け残るのです。

それらのデメリットがあるため、最近は使われる場面がすくなくなりました。

昔は、プールの消毒剤として直接プールに投げ込んで使われてました。

年配の方ならわかると思いますが、昔プールの底に白い丸い玉があった記憶はないですか?

それが次亜塩素酸カルシウムです。

それと昔は、もやし塩素漂白してから袋詰めしてましたが、今ではその用途としても使われることがなくなりました。

洗浄剤や漂白剤として製品化しているものもおそらくないはずです。

 

3.トリクロロイソシアヌル酸

これまで紹介した次亜塩素酸ナトリウムと次亜塩素酸カルシウムは、無機系塩素剤なのですが、このトリクロロイソシアヌル酸と、次に紹介するジクロロイソシアヌル酸ナトリウムは、有機系塩素剤になります。

無機系と有機系の大きな違いは2つあります。

1つは、水に溶かした時の塩素濃度の飛びやすさが違う点です。

有機系の方が、格段に飛びにくく安定しています。

もう一つは、塩素臭です。

有機系の方が、断然塩素臭がしません。

さらに、トリクロロイソシアヌル酸の特徴としては、
・非常に溶けにくい固形塩素剤
・有効塩素が約90%
・酸性
の3つがあげられます。

溶けにくいのに塩素濃度が非常に高い特徴から、次亜塩素酸カルシウムに変わってプールの消毒剤として使われるようになりました。

 

4.ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム

最後に紹介するのが、ジクロロイソシアヌル酸ナトリムなのですが、私がもっとも大好きな塩素剤です。

特徴としては、
・塩素濃度は約60%
・溶けやすい
・中性
の3つです。

さらに有機系塩素剤の特長である、
・塩素臭の低さ
・塩素濃度が飛びにくい
が加わります。

「溶けやすくて塩素濃度が飛びにくい。」

それだけでも、非常に魅力的な塩素剤なのですが、さらに中性なのです。

中性ということは、素材を傷めないので、用途の幅が広がります。

一般向けの商品としては、錠剤タイプの哺乳瓶洗浄剤やハイプ洗浄剤に使われています。

私も業務用の商品なのですが、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウムを使った製品をこれまで、いくつか開発をしてきました。

例えば、このバスフレッシュもその1つです。

素材を傷めないという特徴から木部のカビ取り剤として最近人気の商品で、浴場施設から大変好評をいただいております。

今回は、とてもマニアックな内容になってしまいましたが、少しでも参考になるようでしたら嬉しです!

ABOUT ME
茂木和哉
茂木和哉
汚れ落とし研究家
1975年秋田県生まれ。20歳で温泉浴場清掃をバイトで経験。21歳で工業薬品や業務用洗剤の販売会社に就職。30歳で洗剤メーカーに転職し、1年後の秋田で独立。 独学で掃除と洗剤作りを学び、秋田からパソコン1つで情報発信を始め、自分の名前をつけた代表作「茂木和哉」を大ヒットさせる。現在ではシリーズ展開させ全国のお店に並ぶまでに。 汚れ落とし人生で得たノウハウを惜しみなく伝えるYouTubeチャンネル「茂木流掃除講座」は、チャンネル登録数30万を超える。
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